
額賀苑子

プロフィール
1989 神奈川県生まれ
2013 東京藝術大学美術学部彫刻科卒業
2015 東京藝術大学大学院美術研究科彫刻専攻修士課程卒業
2011 久米桂一朗賞 受賞
2013 安宅賞 受賞「New Artists 2013」Gallery Jin Projects(東京)
2014 「Art jam 2014」Gallery Jin Projects(東京)
「ジ・アートフェア +プリュス – ウルトラ 2014」スパイラルガーデン(東京)
2015 アートアワードトーキョー丸の内 審査員:建畠晢賞 受賞
杜賞 受賞
「ジ・アートフェア +プリュス – ウルトラ 2015」スパイラルガーデン(東京)
「人像 Part.1 Form〈形態〉須崎祐次×額賀苑子」エモン・フォトギャラリー(東京)
「アートアワードトーキョー丸の内 2015」丸ビル 1 階マルキューブ(東京)
「Duet series vol.3 額賀苑子・天明里奈二人展」Gallery Jin Projects(東京)
「3331 アートフェア 2015 – Various Collectors’ Prizes -」3331 Arts Chiyoda(東京)
2016 個展「not clear」/Gallery Jin Projects(東京)
「3331 アートフェア 2016 」3331 Arts Chiyoda(東京)
2018 「九転十起生 – 広岡浅子像」大同生命保険株式会社 大阪本社ビル(大阪)
「陶×藝×術」FEI ART MUSEUM YOKOHAMA(神奈川)
2019 「内包された温度」東京藝術大学大学美術館(東京)
個展「紗のむこう」Hideharu Fukasaku Gallery Roppongi(東京)
2020 TAGBOAD AWARD 特別審査員賞 小山登美夫賞 受賞
陶やテラコッタを主な素材とし、実体と表層、意識と無意識、ペルソナとアニマといった相反する価値観の間を行き来する造形を探求している。人体という古典的かつ普遍的なモチーフを通して、人が抱える矛盾やズレを表現する。空間や質量の中に歪みを取り込み、彫刻という強い実在感を持つメディアに曖昧さや不確かさを含ませる試みである。鑑賞者が立体の周囲を歩きながら、「存在」と「見ること」の間にある断絶を思索する体験を促す。

作品を作り始めたのはいつ頃ですか?
大学の課題以外では、大学の修士課程の頃に声をかけて頂いたギャラリーでの発表が初めてでした。
学部から人体をモチーフに焼き物を主な素材として彫刻を作っていました。
人体という最も身近で最も難解な形を作る際、自分からは何が発信出来るかを考えました。
アカデミックな表現が元々好きで、リアリスティックな造形を志していましたが、
当時台頭していたSNSやアニメ漫画などに見られる、誇張された感情表現や身体性にも関心を持ち、
少しズレたり歪んだりした立体表現に取り組み始めました。

現在の作風に至るまで、どのような試行錯誤を重ねてきましたか?
作品の転機として大きいのは、レリーフ彫刻との出会いです。
フィレンツェのバルチェッロ美術館で、もともと壁に付いていたレリーフが、
壁から外されて展示されているのを見たそのとき、壁から離れると、
急に「質量」が立ち上がるのを感じました。
レリーフの絵画的な物語性が、モノとして迫ってくる。
この状態がすごく面白く頭から離れませんでした。
自分でもレリーフを作ってみると、表(正面)と裏(背面)を作る必要が出てきて、
その“間”が変なことになる。
そこに、私がやりたい「ズレ」や「圧縮」が立ち上がってきたように感じ、
今でもその手法を模索しながら制作を続けています。

作品のアイデアは、日常のどんな出来事や風景から生まれることが多いですか?
違和感や、矛盾といった人間社会で生きていく上で多かれ少なかれ味わう”ままならなさ”を感じた時、
コンセプトが生まれることが多いです。
“人間関係や社会の中で、像がどう歪むか”
これは誰でも経験あると思うんですが、
• SNSで魅力的に見えた人が、会うと全然違った
• 逆に、会うと気が合うのに、SNSでは読めない
• 対面の印象と、第三者が語る印象が一致しない
あと、個人的な経験で言うと、
子どもの頃に、母親の「家での顔」と「職場での顔」が全然違う、と感じたことがありました。
人は、状況で顔が変わる。
そのペルソナの流動性が、ずっと引っかかっていて気がします。
それを彫刻という単純な形で表現出来ないかを断続的に考えています。

制作工程や素材について教えてください。
学生時代は主に素焼きの粘土(テラコッタ)が自分に合っていらと感じ、
その技法でほとんどの作品を制作しておりました。
作り方は単純に言うと、
1. 棒など芯を立てる
2. 粘土で肉付けする
3. ある程度固まったら中をかき出す
4. 完全乾燥
5. 約800度で素焼き(テラコッタ化)
テラコッタは、形を「そのまま残しやすい」。
石や木よりも、造形感覚にフィットする。
キャストの工程を省けるのも大きかったです。
学生時代はかなり、リアル寄りの造形を詰めていました。
しかし、途中で行き詰まりを感じました。
技巧を突き詰めるほど、「全部、自分が責任を取れてしまう」感じが強くなり、
その息苦しさで一時殆ど作品を作れなくなってしまいました。
そこで、釉薬や高温焼成といった陶の素材や技法を取り入れることを試みました。
1150〜1250度くらいで焼くと、釉薬の垂れ、色、景色は窯の中で完結する。
途中で口出しできない。半分、現象に委ねる。それが私には心地よかったのです。
「作品が勝手に終わる」感覚が、自分の性格に合っていたんだと思います。

作品を見る人に、「これを感じてもらえたら嬉しい」というポイントを教えてください。
私がずっと続けているのは、正面像(フロント)を成立させながら、
奥行きを意図的に圧縮するという方法です。
• 正面から見ると「像」や「物語」が見える
• ちょっと角度をずらすと
o 厚みが潰れて見える
o 人物の輪郭が崩れる
o 何を見ていたのか不安になる
この「正面=わかりやすい情報」と「斜め=崩れる情報」の関係が、
そのまま私のテーマと結びついています。
私が扱っているのは、情報はそのまま伝わらない、という問題です。
人は、情報を受け取るときに、必ず「自分の知識・経験・バイアス」を通して理解します。
つまり、同じ情報でも、受け手によって像が変形する。伝達の途中で歪む。
たとえば、
• 対面で見えるその人の印象
• SNSやメディアで作られる印象
• 報道によって“輪郭が強く打ち出された人物像”
こういうものって、ある角度からは「真実っぽく」見える。
でも少し角度を変えると、別の可能性がいくらでも出てくる。
私はその状態を、彫刻という遅いメディアでやりたいと思っています。
彫刻は、すごく不便です。
• そこに行かなきゃ見られない
• 時間をかけて回り込まないと“情報が開かれない”
• すぐ拡散できない
• 画像だと誤読されやすい(正面だけ切り取られる)
でも、その遅さが逆に強いと思っています。
「一枚の画像で確定しない」ことが、彫刻の強みになる。
私は、“一発で理解できない構造”を、彫刻の身体性に賭けています。
今回、「tagboat Art Fair 2026」に出展される作品について教えてください。
今私はずっと絵画に対する強い憧れを持っています。
絵画は、
• 重力がない
• 遠近も自由
• 同じ画面の中に、異なる距離を共存させられる
一方、彫刻はとても不自由です。
重くて、遅くて、融通がきかない。
でもその不自由さの中に、見る人と同じ空間に存在できるという、どうしても手放せない強さがある。
だから私は、絵画的なことに憧れながら、それをそのままやるのではなく、
• 鏡を立体化する
• 虚像を封じ込める
• 表面に別の時間を描く
という、少し無理のある方法で、彫刻の中に引き込もうと試行錯誤しています。

今後の制作において挑戦したいことや意識していきたいことを教えてください。
今後やってみたいこととして、ずっと考えているのが、「遠くにあるように見えるものを作る」
ということです。
彫刻はどうしても「近い」。触れられるし、同じ空間にある。でも、
• よくわからない
• 遠くにあって、輪郭が定まらない
• はっきり見えない
そういうものを、人体でも、人体以外でもいいので、彫刻として成立させたい。
まだ方法は固まりきっていません。
でも、「遠さ」や「距離感」そのものを、造形としてどう扱えるか。
それをこれからも試行錯誤していきたいと思っています。

4月24日(金)ー26日(日)開催:tagboat Art Fair 2026

「tagboat Art Fair 2026」
会期
2026年4月24日(金)ー26日(日)
詳細日時
・Preview -会場限定販売期間-
4/24 (fri) 16:00 – 20:00
・Public View -オンライン同時販売-
4/25 (sat) 11:00 – 19:00
4/26 (sun) 11:00 – 17:00
※3日間どなたでもご来場可能です
会場
東京都立産業業貿易センター浜松町館 展示場2階
〒105-7501 東京都港区海岸1-7-1 東京ポートシティ竹芝
JR/東京モノレール 浜松町駅(北口)から徒歩5分
ゆりかもめ 竹芝駅から徒歩2分
都営浅草線/都営大江戸線 大門駅から徒歩7分
チケット代
1500 円(会期中再入場可能)
※障害者手帳のご提示でご本人様、付添いの方1名まで無料
※学生証のご提示でご本人様無料
※小学生以下のお子様は無料